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千夜千冊・1747夜、松村圭一郎さんの「うしろめたさの人類学」を読んで思い浮かんだことを書いています。
ぼくはとくに芸能ワイドショー観ないので、木村花さんという方の詳細を今夜はじめて知りました。
類型なのかは分かりませんが、先日歯磨きをしながらたまたまチラっと『クローズアップ現代』で、ヴァーチャル・リアリティで亡くなった子供が再現されるドキュメンタリーを観ました。対面した母親との涙の再会と別れが演出されて、ぼくは亡くなった子の魂は自分があんな風になることを喜ぶんだろうかとか、あの場にあの子がいたら「なぜお母さんは作り物をわたしと思って泣いているの」と思ったりしないのかなと思ってしまったり、死んだ人間や霊魂には人権ってないのかなということが気になりました。
またVRに「命が宿りました」と言ってるのを、ぼくは変に感じました。『チコちゃん』というキャラクターに命を吹き込むのと、死んだ子の再現することが一緒になっているのに違和感を感じたのだと思います。
千夜千冊を通じて考えたきた今、アニマとはその場におとずれた霊魂に感応して、それを「才」や仮の「器」に宿らせることだと思っているからなのか…ぼくにはあのリアリティ番組は「日本という方法」とは真逆のアプローチで、何もかもが緻密なシナリオや技術によって完璧にコントロールされているように感じました。
あそこまでやらないと存在を感じられなくなるほど、目に見えないものを想像し、感じる力が危機に瀕しているということなのかと思いました。水木しげるセンセーは「電気が霊や妖怪を追い払ってしまう」と仰っていましたが、ぼくは面影がテクノロジーに追いやられ、その宣伝に人間の生死や感情さえもが利用されているように感じました。もしあんなVRイベントでお盆をするようになったら、家族に会いに来た本当の霊が、VRに夢中になっている家族によって無視されることになるとは、誰も思わないものなのでしょうか。
今夜のお話を読んで、ぼくは自由のための新たな革命に見える「ネット経済やブロックチェーン技術」も、それに参加させるための「GPSやIDカードによる境界」によって、「商品交換(=市場)・贈与(=社会)・再分配(=国家)の境界」を、ますます強固にするだけのシステムなのだろうと思いました。
こんな暗い気持ちをパソコンに残し、朝からスタッフとして、ドタバタ慌てて今年の夏祭りに急いだのですが、今回の祭りは災害に遭ったのに、コロナ詐欺とGoto騒動メディアによって全く無視され、県外からのボランティアが募集対象外となって人手が不足している人吉の農家さんに義援金を募り、農家仲間から直接手渡しするために企画されたものでした。なのでだれもマスクなんかしていませんでしたが、うしろめたさ感染者数はゼロでした。
それはそうと、大変なことになりました!
岡部さんがついに店を作ってしまい、明後日オープンするそうです。
しかしどうやら「縁側」的で、やっぱり最終的には「村」を構想しているようで、楽しそうなので、ぼくもちょいちょい一緒に遊ぼうと思います。
お祭りの様子は、週間天気予報が大雨だったのですが、ぎりぎり晴れて、雨上がりの風が気持ちよく、空気は澄んで、夜には夏の星空が広がりました。
昨年と同じく、シェフ柳原さんの料理が美味しいのは勿論のこと(今年はコロッケが好評でした)。福祉施設のアマチュアバンド「じ~ま~み~」さんのオリジナル楽曲「標無い道」がとても良くて、久しぶりに音楽で感動しました。
岡部さんと何か話さなきゃならない定めだったようで、最終的に三次会まで付き合いました。分かったのは、とにかく岡部さんは「みんなが活躍できる場所を作ろうとしている」ようで、ぼくにもマンガや絵で輝ける場所を与えようとしていたらしいのです。
しかし今回話しているうちにようやく、ぼくは自分がどう岡部さん達と関わり合いたいのか、輪郭が見えてきたようで、それを伝えることができました。
ぼくはマンガや絵で生きて行こうとか、マンガを使って岡部さん達と協力したいわけではなく(けれどそういうふうに自分の絵やマンガを活かす絵師さんを否定するわけではなく)、ぼくは個人的には、何かするとしたらむしろ(マンガも編集だけど、だからこそ)岡部さんの店やイベントを編集したいんだということです。
そのように言って、「ああそうか、ぼくはそういうことがしたいのか」と気づきました(笑)。
岡部さん達は今「来てくれた人を喜ばせよう」と無心にやっているだけなのですが、ぼくにはその動きが、そもそもの「収得」と「貸与」の価値観をゆるがせる「つぎつぎ・に・なりゆく・いきほひ」を喚起しているように見えました。
『破』で学んだことをどれぐらい生かせるか分かりませんが、この遊びも仮留めで、全力回答していこうと思います。